霞喰人の白日夢

霞を食べて生きていけたら..

バイデンは世界を変える?

4月28日(日本は29日),バイデン米国大統領が議会で施政方針演説を行った.NHKは新型コロナワクチン接種が進んで米国が再び前進することを,朝日は米国(民主主義)と中国(全体主義)との競争を見出しに掲げた.

 

NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210429/k10013004481000.html

朝日 https://www.asahi.com/articles/ASP4Y2HPBP4YUHBI009.html

CNN https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210429/k10013004471000.html

 

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これらのニュースをざっと読んで最も私の印象に残ったのは経済対策である.これまでに打ち出していた総額2兆ドルのインフラ投資計画に加えて,育児と教育支援のために総額1.8兆ドルの追加経済対策をするという.「この国をつくったのはウォール街ではなく中間層だ」とのメッセージと,ニューディール政策を進めたフランクリン・ルーズベルト大統領の名前を出してである.明らかに,米国中間層(庶民層)の経済的苦境を救うために富の再分配を実施しようと大きな政府を目指している.

 

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1980年代のレーガン(米国大統領)・サッチャー(英国首相)以来,世界はしだいにケインズ主義から新自由主義の時代になり,1989年のソビエト連邦解体で新自由主義は加速した.自由経済自由貿易グローバリズムを無条件の善とする市場原理主義が当然の社会になり,貧富の格差は広がり,一握りの大金持ち(勝者)が社会の富の大半を得て,貧者(敗者)であるのは自己責任とされた.日本では,自分が貧しいのは自己責任であると貧者自身が思うまでに洗脳されてしまった.そして,誰も彼もがお金を中心に,お金のためにものごとを考えるようになり,そのために多少の倫理を踏み外しても,他人を不幸に追い落としても仕方がないと考えるようになった.ホリエモンとか,村上世彰とか,社会的不正を働いても自分の利益を増やすことを優先する人々 − 昔だったら眉をひそめられるような人々 −  が世の中で受け入れられたりする.

 

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バイデン大統領はその流れを止めようとしている.偏りすぎた富を再配分し,「労働に報いる」形で中間層を復活させようとしている.共和党は抵抗するだろうが,もしバイデン大統領のこの政策が成功したら米国は大きく変わる.米国が変われば世界も変わるだろう.それは時代が変わるということだ.一握りの大金持ちとエリートのために大多数の庶民がつらい下働きをする社会ではなく,大多数の庶民がささやかな幸せと豊かさを感じられる社会になるだろう.

 

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それが実現すれば,最大の貢献者はバイデン大統領ということになるだろうが,影の功労者もいる.トランプ前大統領だ.トランプ大統領こそが時代に取り残された米国の労働者たち − 忘れられた人々 − を結束させ,ウォール街シリコンバレーのエリートばかりを見ている政治家たちにNOを突きつけたのだ.トランプは,人として,政治家としてほとんどメチャクチャではあったが,非米国民には非情であったが,たった一つ,米国社会でこれほどにも多くの忘れられた人々が生きている,ということを顕在化した点で重要な役割を果たしたと思う.