霞喰人の白日夢

霞を食べて生きていけたら..

日本国劣化と若いエリート

6月25日,金曜日.定年後の生活は毎日が日曜日だ.しかし毎朝ゆっくり起きて朝食後のぼんやり過ごす時間を大切にしたいとか,健康のため毎日散歩したり自転車に乗ろう,新しい遊びを始めよう,家人に課せられた家事をまともにこなす学習・準備をしようなどをしていると,あっという間に時間が過ぎてしまう.その上,夕方になればビールでも飲もうということになるから,なかなかブログを書くネタを調べる時間も書く時間もない.今日は天気もあまりよくなく,家事を言いつける家人もいないので,久しぶりにブログを書くことになった.

 

asahi

今朝,新聞を広げて見ると,まず『閣僚「五輪中止を」拒む首相』との一面トップの見出しが目に入る.その左には『教職敬遠され採用倍率最低』(35面に関連記事として『先生ほしい 下げるハードル』)があり,一面の右下には『コロナワクチン日本市場3000億円』,そして左下には『香港消された言論』と配置されている.一枚めくった右側の二面には一面トップの続きが詳細に書かれ,左側の三面には『赤木ファイルに「資料 議員に持っていくつもりない」財務省,野党要求拒否認める』の記事がある.

 

一面から三面まで,そして35面の関連記事をひととおりざっと読むが本当に気が滅入る話ばかりだ.特に,五輪中止を拒む首相の記事,応募者を増やすために教員採用の筆記試験を免除する記事,赤木ファイルを隠し続けた不誠実な財務省の記事は,日本という国の著しい劣化,別の言い方をすると政治と行政の後進国化,を改めて認識させ,言うべき言葉を失う.しばらくして頭に浮かんできたフレーズは,『いったいどのような教育を受け,どのような経歴を持った人がこのように不誠実でデタラメな政治と行政を行うことができるのか』,そして『どのような人々がこのような政治・行政を許容することができるのか?』である.途方に暮れ,もう新聞を読んだりニュースを見たり考えることはやめて,個人的な楽しみの生活に閉じこもってしまおうかとさえ思ってしまう.

 

Kurodai

例えば...

先週末,満潮時の河口にあれほどたくさんいたクロダイは今週に入ってぱったり消えた.あのクロダイたちはいったいどこに消えてしまったのだろうか.橋の下でパーティをしていた彼らは,今シーズンの祭りを終えて海に帰ってしまったのだろうか.それとも,大潮が終わればまた河口に戻ってくるのだろうか(知っている人がいたら教えて下さい).今シーズン,初めてのクロダイ釣りは諦めて(つまりクロダイのアクアパッツアは諦めて),港内のサビキ釣りで豆アジかヒコイワシ(シコイワシ)を狙おうか(豆アジかヒコイワシの酢漬けか天ぷらにしようか)などと考えている.

 

五輪中止を拒む首相の記事に戻ろう.

https://www.asahi.com/articles/DA3S14950623.html

 

olympic

記事によれば,5月半ばから6月21日の五輪の5者協議まで,何人もの閣僚らが菅義偉首相に五輪中止を求める直言をし,中止の決断を迫ったという.しかし,菅義偉は「ワクチン接種を加速させる」,「感染者数は6月に減るはずだ」との妄言を繰り返した.五輪にワクチンが間に合わないこと,7月には第5波が来ることを専門家たちが指摘していた最中にだ.5者協議直前の20日には「分かってるよ.宣言になったらやめればいいんだろ」と捨て台詞とも思えるような発言をしたという.

 

こんなことも行ったと記事はいう.「五輪はやめるのが一番簡単なんだ.でもここまできた.全部止めるわけにはいかない.」 本人は嘘をいったつもりはないかもしれないがそれは事実ではない.ズルズル引きずってきた五輪であるからこそ,6月に入ってからやめる決断をするのは大変だったはずだ.周囲の反対を押し切ってずっと【実施】と言い張ってきたのだ.その本人がやめると言い出せば周囲の政治家も官僚も一気に士気が下がるだろう.親玉の菅義偉は,やる気を失った関係者たちと国民に対して,決断が遅れた理由と,遅れた決断をあえてする理由を明確に述べなければならない.さらに,それによる大混乱を最小限にするための手順を迅速に合理的に考え,指示しなければならない.菅義偉にもその周辺の大臣や補佐官にもそのような能力は皆無だろう.忖度官僚たちにもあるはずがない.菅義偉にとっては,思考を停止し,希望的観測に基づいて,五輪を強行することが一番簡単だったのだ.というより,それ以外の選択肢を実行するために必要な能力がなかった,が本当のところなのかもしれない.

 

suga

会社など組織の中で長い間働いた人間であればわかると思うが,このように振る舞うオヤジはどこにでもいる.何の根拠も示さず,現実を見ず,希望的観測に基づいて,自分の(考えではなく)思いだけを述べる.それではうまくいかない,トラブルが起きると心配する部下や若い人たちがどんなに根拠を示しつつ説明しても聞く耳を持たない.自分に従うものに対しては面倒見が良いが,批判したり反対する同僚や部下には厳しく接する.その一方で自分より上位の者には無条件にへつらう.

どうしようもなくだめなオヤジだが,うまくいってない会社や組織にはそこそこの地位,例えば部長補佐などにこんなオヤジがいたりする.そんな三流組織の部長補佐クラスが日本の首相になってしまったのだ.我々国民が首相にしてしまったのだ.

 

長期的に落ち目で復活反転する見込みのほとんどない二流国・日本だが,このようなダメ親父を首相にしてしまった.しかもダメ首相の妄言,暴走を押し止めることのできない政治家や官僚しか周りにはいない.これでは三流国,四流国に落ちるのも遠くないだろう.

 

Kurodai

日本の若いエリートたちもそれは切実に感じているようだ.東京大学の卒業生で官僚を目指すものが激減しているとの報道があった.一流大学の卒業生達が就職先の第一希望とするのは都市銀行でもなく一部上場の大メーカでもない.彼らが目指すのは外資コンサルティングとグローバルIT企業だ.つまり,頭の良いものほど日本を見捨て海外に出ていこうとする時代になった.それは,インド,スリランカバングラデシュの若いエリート達と同じだ.

 

もちろんそのことを批判するつもりはない.彼らには彼らの人生があるし,エリートといえども彼らに今の日本を変えるほどのパワーがあるとは思えないからだ.ただ,彼らの優れた能力を,社会や公共のためにではなく,彼らが金持ちになるという個人的欲望のためだけに使うことに,何のためらいも見せないその姿に,とても深い悲しみを覚える.彼らエリートが勝ち取った能力や地位は,もちろん彼らの努力と両親から与えられた幸運もあるのだが,税金という公共のお金をかけた教育があればこそなのだから.