霞喰人の白日夢

霞を食べて生きていけたら..

金融機関でのコイン取り扱い有料化

yuucho

1月17日から,ゆうちょ銀行がコインの預け入れや振り込みをする際に手数料を取るようになった.

以下のサイトから引用する.

 

 

 【ゆうちょ銀行 硬貨での預け入れや振り込みに手数料 きょうから】

 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220117/k10013434661000.html

 

>> 窓口では硬貨の種類にかかわらず50枚までは無料ですが、

>> ▽51枚から100枚までは550円

>> ▽101枚から500枚までは825円

>> ▽501枚から1000枚までは1100円で

>> これより多い場合は500枚増えるごとに550円加算されます。

>> またATMで預け入れをする場合は、硬貨の種類にかかわらず1枚から手数料がかかります。

>> ▽1枚から25枚までは110円

>> ▽26枚から50枚までは220円

>> ▽51枚から100枚までは330円です。

 

例えば,窓口で1円玉100枚を預けようとすれば550円を手数料として取られる.ATMでさえ330円の手数料をとる.私自身は現金よりクレジットカードやスマホペイを好むこともあって,金融機関でコインを預けることはないのだが,それでも『え〜,ホントかよ』と思った.90歳を超えた私の母親は日々現金を使って生きているし,クレジットカードもスマホも持っていない.スーパーでは日々,鈴のついた財布を開いて,なるべくお釣りが少なくなるように,小銭を数えて支払いをしている.

記事を読んですぐに頭に浮かんだのは小学生の頃の記憶だ.月々の小遣いとして300円をもらっていたが,それは菓子や玩具を買うために使えるお金ではなく,学校で使う鉛筆や消しゴム,ノートなどを買うためのものだった.つまり,勉強で必要なものは小遣いの範囲内に抑えなさいということ.だから無駄遣いなどできない.お釣りでもらう1円玉は貯金箱にいれて貯めていた.

 

tombo

当時,横浜の下町の小学校で,同級生が持っていた鉛筆は一本10円のトンボ鉛筆三菱鉛筆が一本50円のユニという高級鉛筆を出していたが,それには手が届かない.1本5円のコーリン鉛筆もあったが,子どもたちは芯が折れやすいと言ってほとんど使ってなかった.私はとにかく安い鉛筆が欲しかったのだが,見栄もあるし,やはりコーリンでなくトンボ鉛筆が欲しかった.そんな私を助けてくれたのが近所の文房具屋だった.1円玉を80枚貯めていくとトンボ鉛筆1ダースと交換してくれたのだ.1本あたり6.7円.コーリンより高いが私にとっては神様のような文房具屋だった.

 

 【三菱鉛筆ユニ】

 https://www.nttcom.co.jp/comzine/no023/long_seller/index.html

 【コーリン鉛筆】

 http://karikachi.kitunebi.com/bungu/colleen/old_colleen.htm

 

mizutani

60年近く前の私だけではない.今でも1円玉や10円玉を貯めている子供たちがいる.子供たちだけではない.満額でも年額780,900円(令和3年)の国民年金だけで暮らしているお年寄りもいると聞く.社会の目立たないところで,爪に火を灯すようにして貯めたお金で生きている人たちがこの世の中には大勢いるのだ.夜回り先生こと,水谷修が『もう郵便局や銀行にはお金を預けない!』と怒っている.金融機関なしに生きることは現実には相当難しいので,私はそこまで言い切ることはできないが,本当に腹立たしく思う.

 

 【貯めた小銭で支払いする高齢者…背景に銀行や郵便局の手数料 憤る夜回り先生「もうお金は預けない。契約は解除する」】

 https://news.yahoo.co.jp/articles/69348715bdf328deb2a76a59883b396c1af959f4

 

水谷修が怒っているように,コインに対してて手数料を取るのはゆうちょ銀行だけではない.以下のサイトによれば,三菱UFJ銀行みずほ銀行は100枚まで,三井住友銀行は300枚まで手数料を取らないが,それ以上は550円の手数料を取っている.

 

 【各銀行のコイン取り扱い手数料】

 https://smbiz.asahi.com/article/14388478

 

金融機関は『コインの取り扱いは人件費や機械などのコストがかかる』と言い訳をするだろう.だがそれは理由にならない.コインの取り扱いが金融機関の本来業務でないならその言い訳は通用するかもしれない.だが,多くのお金を数えて正しく取り扱うこと − それは通貨の形態や大小を問わずに通貨が持つ価値をその価値として引き受けることを含む − は金融機関に必須の,いや必須以前に守らなければならぬ本質的な業務なのである.その本質的な業務をイヤイヤやる - 手数料くれなければヤラない - と言うのであれば,金融業をやめればよいのである.

もちろん,一般に,20枚以上の同一貨幣は受け取りを合法的に拒否できることは知っている.

 

>> 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律

>> (法貨としての通用限度)

>>

>> 第七条  貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。

 

 【「小銭は20枚を超えたら受け取れません」の誤解】

 https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20140616-00036114

 

しかし,一般の商店等であるならいざしらず,貨幣を分類し数える機械を常備しているであろう(ないなら常備すべき)金融機関にそれを許すことは私の倫理観では考えられない.手数料をとることも同様だ.先に述べたように,公的な金融機関が,通貨の形態を問わずに通貨が持つ価値を ”そのまま” 引き受けないとしたら,それはその国の公式な通貨とはとても呼べないと思うからだ.手数料を取るということは,そのまま価値を引きうけるのではなく,価値を減じていることになるからだ.

 

100歩譲って,三菱UFJ銀行みずほ銀行三井住友銀行のように,20枚以上あるいは100枚以上なら手数料を取ってよいと認めざるをえないにしても,コイン1枚から手数料を取るというゆうちょ銀行のやり方は許しがたい.

 

法律できちんと金融機関が守るべき義務を定め,規制すべきだろう.『規制緩和』とは国民の自由を奪う無意味な規制に対して行うべきであって,大企業や社会の強者による搾取から弱者を守る規制はしっかりと維持すべきである.