霞喰人の白日夢

霞を食べて生きていけたら..

ウクライナ戦争と嘘不感症に感染したメディア(2)

前回の記事では、ウクライナ戦争に関して、なぜプーチン100%悪玉論に疑問を持ったか、何を見て、どのようにしてNATOウクライナにも相応の非があると考えるようになったかを述べ、その資料を提示した。今回は、それらの資料からわかる事実に説明を加え、2008年頃から2022年2月まで、ウクライナで何が起きていたかをを整理しておく(もし事実として誤りがあれば訂正するつもり)。

 

https://mistydream.hatenablog.com/entry/2022/08/04/160257

 

○2014年以前

ウクライナは東西で政治的状況が全く異なる。西側住民は大半が親EUで東側は逆にほとんどが親露と、国民がほぼ2つに分断されていた。西側ではウクライナ語が話されるが。東部の親露住民はほとんどがロシア語ネイティブである。大統領選挙でも親EUと親露が拮抗して争う状況であった。2008年、当時の大統領は親EUのビクトル・ユーシェンコであったが、この年にNATOクロアチアアルバニアNATO加盟を決め、さらにウクライナグルジアについては将来の加盟を認めた。しかしNATO内でも意見は別れ、米国(ブッシュ大統領)はウクライナグルジアの加盟に積極的であったが、フランスとドイツはロシアを無用に刺激すると反対していた。もちろん、ロシアは自国の脅威になると反対を表明していた。

 

https://www.reuters.com/article/idJPJAPAN-31139120080403

https://www.afpbb.com/articles/-/2372790

 

2010年のウクライナ大統領選では、決選投票で親EUユーリヤ・ティモシェンコを破り、親露派大統領ヴィクトル・ヤヌーコヴィチが誕生した。そしてこの年、ヤヌーコヴィチは、2017年までのロシア黒海艦隊のクリミア駐留を25年延長する合意文書に調印した。一方で、2013年にはEUとの政治・貿易協定の仮調印をしている点を考慮すると、必ずしもガチガチの親露派ではなかったかもしれない。だが今年、ウクライナ検察庁は、9年前の前者の調印は国家反逆罪にあたるとしてヤヌーコヴィチの逮捕状を取ることになった。

(ヤヌーコヴィチにとっては、後述するマイダン革命時に起きた虐殺の責任もあるとしてすでに逮捕状が出ていたので、追加の逮捕状となる。だが、詳しくは述べないが、マイダン革命時の虐殺がヤヌーコヴィチ政権側でなく反政府側の挑発行動であったことは、エストニア外務大臣EU外務大臣の電話盗聴、およびビクトリア・ヌーランド米国務次官補と駐ウクライナ大使の電話盗聴により明らかになっている)

 

https://japanese.joins.com/JArticle/291441

https://ameblo.jp/osaka-bengoshi/entry-12733961828.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%83%8C%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

 

当時ウクライナは経済危機に陥っていた。ヤヌーコヴィチはEUおよびIMFの支援を求めて貿易協定の仮調印をしたのだが、彼にとって納得できる支援を得ることができなかったことから(本人発言、ウクライナ・オン・ファイアー参照)、あるいはロシアの圧力があったことから(西側メディア報道)、西側の支援を諦め(協定の本調印をせず)、ロシアに支援を求めることとなった。一般論として、経済危機に陥った国に対するIMFの支援は非常に過酷な条件(徹底的な福祉切り捨て、歳出削減、民営化等の新自由主義的政策)を課すため、その支援を諦めることもありうる判断だと思うのだが、これをきっかけに親EUの西側にある首都キエフで大規模な住民デモが続いていた。

 

https://www.bk.mufg.jp/report/ecowws2013/Ukraine-2013-03-J.pdf

https://www.bk.mufg.jp/report/ecowws2013/Ukraine-20130828-J.pdf

https://www.bk.mufg.jp/report/ecowws2013/Ukraine-20131213-J.pdf

 

○2014年

 前年からの平和的な住民デモは、ウクライナの極右暴力勢力(右派セクターやアゾフ等)と米国情報機関の工作(当時はオバマ政権で、ウクライナ担当はバイデン副大統領だった。ちなみに、リビアやシリアはヒラリー・クリントン国務長官の担当)により暴徒化・過激化し、先に述べた虐殺も起こり、結果として非合法な政府転覆に至った(マイダン革命もしくは暴力クーデター)。この革命もしくはクーデターの詳細は、前回に示したウクライナ・オン・ファイアーを始めとするいくつかの動画に描かれている。

その後の暫定政権および新政権は極右の影響が非常に強い親EU政権となった。勢いに乗った極右勢力はキエフオデッサでロシア系住民への暴力・虐殺等を繰り返した。「オデッサの悲劇」はその中でも最大の虐殺事件であったが、極右の影響が強い新政権はその捜査すらしようとはしなかった。そのためロシア系住民が大半である東部ドンバス地方やクリミア半島は、ウクライナからの独立あるいは自治権を求め、自主的住民投票に走った。クリミア半島にはロシアの軍事上重要な黒海艦隊の拠点がある。ロシアは、米国の力を借りて親露政権を非合法に転覆したウクライナには渡せないと(おそらく考え)、クリミア半島を併合した。ドンバス地方の住民たちもクリミアと同様の併合をロシアに求めたようだが、結局ロシアから見捨てられた形になり、ウクライナ政府に自治権・独立を要求することになる。

 

https://ameblo.jp/osaka-bengoshi/entry-12733961828.html

 

 ドンバスからの自治権・独立要求に対し、ウクライナ暫定政権(オレクサンドル・トゥルチノフ)とその後の新政権(ペトロ・ポロシェンコ大統領)は、ロシア語禁止と軍隊派遣で答えた。そして内戦が始まる。当初は「象と蟻の戦い(ルガンスク人民共和国軍司令官)」であったが、ドンバス地方出身の兵士が戦車等の兵器ごとドンバス側に寝返り、またそれぞれがEUまたはロシアの軍事支援を受けることで、内戦はほぼ8年続いた(まだ終わってない)。

 2014/9と2015/2には、ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4カ国が2回に渡って停戦合意(ミンスク合意)をしたが、合意後にウクライナが見直しを要求し、ロシアが拒否する、を繰り返して合意は全く守られていない。 ミンスク合意には、ドンバスに『特別な地位(自治権)』を与えることが記されている。ウクライナミンスク合意を守れなかった背景には、政権の中枢に入り込んでいた極右の親玉(ドミトリー・ヤロシ)がポロシェンコ大統領に「ミンスク合意を実施したら殺す」と公開の場で脅迫した事実がある。ゼレンスキーも極右に同様の脅迫をされてることは公然の秘密のようだ。

 

https://www.rt.com/news/188572-ukraine-riots-poroshenko-radicals/

https://www.youtube.com/watch?v=crgqws6v9fU

https://www.youtube.com/watch?v=kvXZbRuR4SY

https://www.watchdogmediainstitute.com/p/blog-page.html

 

ウクライナ国内の極右による脅迫、殺害、拷問の報告・動画は、google, facebook, twitterの検閲により次々と削除されているが、それでも丁寧に探せばネット上に溢れている。ウクライナでは多くの野党政治家、ジャーナリスト等の殺害・拷問・失踪も報告されており、今年3月、ロシアとの停戦協議の代表の一人、デニス・キレーエフも停戦に積極的だったため「スパイだった」として殺害されている。

 

https://marktaliano.net/sbu-the-terrible-ukrainian-political-police-assassinations-and-torture-by-laurent-brayard/

https://www.donbass-insider.com/2022/03/10/sbu-the-terrible-ukrainian-political-police-assassinations-and-torture/

https://www.thedailybeast.com/ukraine-tries-to-terrify-journalists-who-cover-the-war

https://note.com/8479567uso/n/nc79e7c685475

https://news.yahoo.co.jp/articles/60a574e4d6f32b1774cac0dea84e353bab91f439

https://www.chunichi.co.jp/article/430288

 

なお、以下のサイトは、ウクライナによるいわゆる"kill list"である。野党政治家やドンバスで活動する独立ジャーナリスト達が登録されている。一番上の"ФИО"の欄に、"John Miller"、"Partick Lancaster"、"Alina Lipp", "Graham Phillips", "Eva Bartlett"など、ジャーナリスト名を入れると戦争犯罪者として表示される。

 

https://myrotvorets.center/criminal/

 

○2015-2022/2月

 2015年には2度めのミンスク合意があったが結局守られず、8年間、ウクライナからドンバスへの攻撃は続き、多くのロシア系住民が殺された(西側メディアでは全く報道されないが、ドンバスで取材を続ける米、英、独、オランダ、カナダ等の独立ジャーナリスト達が報告している。彼らは先のkill listに入れられた)。この間、ドンバスの民兵ドネツク民共和国とルガンスク人民共和国の兵士)がドンバスの外を攻撃することはなく(その報告は見当たらない)、ロシアは兵器等の支援をしたであろうが、軍隊を入れる支援はしてこなかった。2021年、米国大統領がバイデンに変わると(2014年の政府転覆時、バイデンはオバマ政権でウクライナ担当だった)、ウクライナNATOは、クリミア半島とドンバスを征服すべく、攻撃準備を開始し、軍事支援・軍事訓練を強化した。特筆すべきは、NATOはロシアを核攻撃する訓練も実施していた(Christopher Black, the legality of war)。プーチンが核使用について言及したのはこの事実があったからかもしれない。

また、2022/02/16にはウクライナからドンバスへの砲撃が急激に増えたと、元スイス軍情報将校、元NATO安全アドバイザー、かつ元国連平和活動局所属であったジャック・ボーが報告している。彼は、戦争はロシアが侵攻した2022/02/24ではなく、02/16に始まったと考えるべきだと語っている。

 

https://note.com/14550/n/ne8ba598e93c0

https://note.com/14550/n/n6603d32072eb

https://note.com/14550/n/nbcebd70d9726

https://journal-neo.org/2022/03/08/the-legality-of-war/

https://christopher-black.com/the-legality-of-war/

 

長くなった。この記事では、2022/02/24、ロシアがウクライナ侵攻してからの話を書こうと思っていたのだが、その前の状況だけでこれだけ長くなってしまったてので、続きはまた。

 

つづく、、、