霞喰人の白日夢

霞を食べて生きていけたら..

福島第一原発での放射能汚染処理水の海洋放出について思うこと

世の中では新型コロナに関する緊急事態宣言に注目が集まっていると思うのだけれど,今日は,トップではないが朝日新聞の1面にあった記事,福島第一原発敷地内に貯められた放射能汚染処理水の海洋放出について書こうと思う.

朝日新聞が行った世論調査によれば,「汚染された水から大半の放射性物質を取り除き,国の基準値以下に薄めた処理水を海に流す」ことについて,32%が賛成,反対が55%だったという.また,8割以上の人が放出による水産物への風評被害の不安を感じるとのこと.

https://www.asahi.com/articles/ASP135S0CNDJUZPS001.html

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14751691.html?_requesturl=articles%2FDA3S14751691.html&pn=2

ところで,goo辞書によれば,風評被害とは「根拠のない噂のために受ける被害」のことだという.そうであるなら,上記の新聞記事は,処理水の放水による水産物の影響を心配したり不安だとする文章を書くことは,根拠のない噂を広げることに加担することだと暗に言っていることになる.しかし,それは本当に【根拠がないこと】なのだろうか.福島原発放射能汚染の話になると,とかくマスコミは「風評」や「風評被害」という言葉を連発する.何の落ち度もないのに地震原発事故の被害にあった福島の人々が必死になって復興を目指しているのに,それに水を指すようなことは言うな,ということなのだろう.その気持はよく分かる.誠意の見えない東電と優しさの感じられない国や自治体のことを考えればなおさらだ.でも,福島の復興が人々にとって何より大切だから,国民のコンセンサスだからといって,福島とその隣県にばらまかれた放射性物質が消えるわけではない.除染ですべての放射性物質を取り除くことが不可能なのはチェルノブイリ原発事故の経験で分かっている.雨がすべてをきれいに流してしまうわけでもない.そうであれば「本当に放射能の危険はなくなったのか」との問いを持つことは当然だし,忖度をせずに疑問を明らかにすることの重要性の点からも問いを発することは正しい.さらにいえば,危機管理の大原則である「リスク最小化」の面からも万全を期すことは正しい行為だろう.このような点から考えれば,政府やマスコミが頻繁に利用する「風評被害」という言葉は,日本国民の優しさにつけ込み,国民を事実や知性から遠ざける行為ともいえるのではないだろうか.

話を放射能汚染水を処理をした水(処理水)の話に戻そう.この処理水は,高濃度の各種放射性物質を含む汚染水をALPS(アルプス:多核種除去設備)と呼ばれる装置で処理し,トリチウム三重水素.水素の同位体原子核が陽子1つと中性子2つからなる放射性物質)以外の放射性物質を安全なレベルまで取り除いた水とされる.トリチウムだけが取り除けていないという意味で「トリチウム水」と呼ばれたりするが,実は,トリチウム以外の放射性物質も取り除けずに残っているという報道もあるのだ.

https://news.yahoo.co.jp/byline/kinoryuichi/20180827-00094631/

しかし,話を複雑にしないため,ここでは(本当は信用し難いのだが)政府や東電が言うように,トリチウム以外はすべて,安全なレベルまで取り除かれているものとしよう.今,政府が海洋放出しようとしている処理水はこのトリチウム水である.このトリチウム水を,法令基準の1/40まで海水で薄めて放出しましょうということなのだが,要は,それが本当に安全なのかどうかである.公的には,つまり,政府や原子力発電研究者たちは,トリチウムの出す放射線ベータ線)は弱い,外部被曝の心配はない,通常の原子力発電所からも日常的に海に排出されているが問題は起きてない,などの理由で安全だと説明する(問題ない,安全だ,とする情報はたくさんあるので,以下の記事を1つだけ挙げておきます).

https://www.ene100.jp/fukushima/6939

他方,トリチウムの毒性を指摘する記事も見つかる.

https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-02-02-20.html

http://www.com-info.org/medical.php?ima_20181211_nishio

http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp0897..html

正直にいって,この分野の専門家ではない私にはどちらを信用してよいのかはわからない.「公的」とはいっても,数々の嘘(公害や薬害や経済成長やモリカケ桜など)で国民を騙してきた自民党政権原子力村の言葉を,簡単に信じるわけにはいかないのだ.そうなると,危機管理の大原則である「リスク最小化」で判断せざるをえない.それは,トリチウム水の放出は「とりあえず反対」だ.政府と原子力村が本当のことをいっているかどうかわかるまで.

最後に素人として疑問に思っていることが2つ.

 (1) 人間の体は有機化合物.水素もたくさん含まれている.肺に入る水蒸気や,胃や腸にはいる水分から体の一部分としてトリチウムが取り込まれることはほとんどないと本当に断言できるのか?(影響は少ないとされている,とかのいい加減な答えは却下.具体的な研究成果とか根拠を示してほしい)

 (2) 海水で法令基準の1/40に薄めて膨大な水量のある海に放出するって意味あるの? 例えばの話だが,1トンの汚染水があるとする.これを海水で1000倍に薄めて1000トンにして1日かけて放出するのと,薄めない1トンの汚染水を少しずつ1日かけて放出するのでは,放出するトリチウムの量は同じだろう.薄めるっていうのは,ただの気休めにしか思えない.