霞喰人の白日夢

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福島原発の今と将来

昨日2月19日,東京電力が福島第1原発1号機と3号機で格納容器内の水位が数十センチ低下したと発表した.13日の福島県沖の地震の後で起きたらしく,東電は配管の損傷が広がったためと見ているようだ.

https://www.excite.co.jp/news/article/Jiji_20210219X758/

緊急を要する事態ではなさそうだし小さなニュースではあるが,もしこのまま水位が下がり続けたら..などと考えたら,なんだか絶望的な気分になってしまった.そこで,改めて福島原発の今と将来を簡単に整理してみたい.

まず思い出さなければいけないのは,2011年3月11日に出された以下の「原子力緊急事態宣言」だ.

https://www.kantei.go.jp/saigai/pdf/kinkyujitaisengen.pdf

この緊急事態宣言はたぶん今も解除されていない.「たぶん」と入れたのは,あまりにもこの宣言が話題にならないためひっそり解除されてた,なんてことがあるかもしれないと思うからだが,東京新聞の記事によれば少なくとも2020年6月30日時点では解除されてない.だから今も解除されていないといって間違いないだろう.

https://www.tokyo-np.co.jp/article/38847

しかし今,この緊急事態宣言を意識して生活している人,それ以前にそのことを知っている人はどれだけいるだろうか.新型コロナの緊急事態宣言とその解除についてはテレビや新聞で大騒ぎをしている.でも原子力緊急事態宣言については皆忘れているようだ.緊急事態宣言だけではない.2020東京五輪パラリンピックの原点が『復興五輪』であったことも皆忘れかけている.

https://www.reconstruction.go.jp/2020portal/reconst-olympic/

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/pdf/20200825fukkou_olypara.pdf

五輪誘致時の首相だった安倍晋三を継承したはずの現首相・菅義偉ですら,もう『復興五輪』とは言わずに,『コロナに打ち勝った証としての五輪』だと言い出している.

https://mainichi.jp/articles/20210220/k00/00m/010/015000c

結局,福島の人を除けば,ほとんど誰も原発のことなんか気にしていないように見える.でもだ.福島第一の廃炉までの道のりは想像を絶するほどに厳しいのだ.昨年暮れには,2号機でのデブリ(溶融燃料)取り出し作業開始の延期が発表されている.

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG241P00U0A221C2000000/

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東電は1年延期と言っている.でも多少なりとも原子力事故の厳しさ・怖さを想像できる人なら延期はやっぱりねと思うだろうし,1年延期で済むわけないとも思っているだろう.1979年のスリーマイル原発事故(米国)でも,そして1986年のチェルノブイリ原発事故(旧ソ連,現ウクライナ)でも,その後にデブリが取り出されたことはない.どうやって大量のデブリを取り出すかも,最終的に取り出せるかどうかも本当のところはわかってないのだ.だから2050年頃までの廃炉計画も,結局は大本営がたてた机上の空論でしかないのだろう.

http://umaebina.com/fukuichi-2019

https://www.nhk.or.jp/d-navi/sci_cul/2020/03/story/20200304_story/

https://www.asahi.com/articles/ASN1Q5W0TN1NULZU00S.html

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デブリに含まれる放射性物質の種類について,私はよく知らない.しかしよく耳にするセシウム137やストロンチウム90だけであればその半減期は約30年,もしプルトニウム239が含まれているなら約24000年だ.もし高い放射線を出すデブリを取り出すことが人間にとって不可能な作業であるなら(その可能性は十分にあるし,私は無理なんじゃないかと思っている),少なく見積もっても100年以上,もしかしたら10万年以上,ずっとこのまま壊れた福島原発に大量の水を注入し続け,冷やし続けなければならないことになる.地震,台風,津波といった自然災害が頻発するこの日本で,そんなに長期間,絶えず大量の水を注入し続けることは果たして可能なのだろうか.もし不可能だとしたら...